二年ほど前の夏も終わりをつげた頃「さて、もう15時か!遅くならない様帰り支度でも始めるとするか」と最近の定時での退社に少しばかりの疲労を感じていたジェシーこと社長は飲みかけの珈琲を惜しみながら
デスクの片付けをしていた丁度その時であった。オフィスのドアーの方から「コンコン」と物音がした!いや、聞こえたように感じた。
か弱いと感じるその音は、まるで夏を生き抜き、いよいよの別れに恐怖を感じ死を覚悟したセミの羽ばたきの様に・・・
なのでジェシーは一瞬聞き間違いか最近始まった高層マンション建築のいつもの騒音かと思い、気にすることもせず食べかけのモンブランを口にほおばりながら散らかった机の上の片付けの続きを再開した。
が!やはりドアーの方から音がする。いや音と云うより振動にも似た、けたたましい確信できるものであった・・!それは夏の大空を一夜限りの夢空間として観衆たちの心に一服の清涼剤の様に魅了する大玉花火のラストの『ド~ン」 あの一発の・・・いや入道雲を見つけ足早で家を目指す子供たちをあざ笑うかのような雷鳴の「バリバリドカーン」のほうが近い様な激しくも何かを訴えるようなドアーのノックに今度ばかりは聞き間違いでは無いと確信を得たジェシー(社長)は足早にエントランスに向かった。
そのガラスドア一枚の向こうには額から脂汗を滲ませ手には何か白い封筒のような物を手にした若者?いや青年!?いやいや少し青空球児好児の「ゲロゲええロ」をお笑いのネタにする方に似たオッサンがたたずんでいた。目には少し光る物も感じ取れたが、それが涙だったか?ガマの油だったか?はこの時点では知る由もなかった。
とにかく尋常とは到底思えないその姿にジェシーはためらうことも忘れついついドアロックの解除をし彼を中に迎え入れる事にした。
彼は転がり込むを通り越し一回転しながら(青空球児ばり)「ありがとうございます ゲロげえろ」ん?今何て言ったと不信を感じずにはいられないジェシーを尻目に彼は一言だけボソッと告げたかいなや矢継ぎ早に今度は「就職 しゅうしょくさせて下さい」と張り裂けんばかりの大声で訴えてきた! 「パン屋で」 「バイトの女の子をトイレで」 「パン屋で」 「レジの中の」・・・そう繰り返すばかり彼の肩にジェシーはそっと手を乗せるフリをして続きの話に耳を傾けた。
どうやら弊社の新入社員募集を目にして応募をして来たようだった。しかし何故こんな時間にいきなり?ジェシーは一抹の不安を感じながらも仕方なく彼を奥に通し一応の話だけでも聞いてあげよう!と、片付けようとしていたコーヒーに少しだけ水を足し彼に、ジェシーは淹れ直した熱めの珈琲を口にしながら(今日も早上がりは無理かな?カラーしたばかりの髪をかきあげながら少しばかり、時間の神様に微笑みながら文句を言った)
彼曰く(パン屋の店長をしていたが何の魅力も感じられなくなった!出来るなら自信が有る体力が活かせる御社の仕事で将来のゴールに向かって頑張らせて欲しい。お願いします就職させて下さい!)
肩に力が入り呼吸もままならない彼を見てジェシー(社長)はこの男出来るヤツかも知れない、よし使ってみるか!「わかったよ人生には岐路はつきものだ」そう言葉少なめに了解したジェシーはまたもや岐路を間違えてしまった!次の日早速会社に自転車でやって来た彼に車は無いの?と尋ねると「ハイ❕免許持ってないんで❣」 て てめえ🔥と追いかけるジェシー・・・彼はあたかもカエルのようなジャンプで逃げていった🔥